標高が平均4500メートルで、一年の平均気温が氷点下3.3度、一年のうち約120日が冬である。
これが三江源国家公園の中心部にある青海省玉樹蔵(チベット)族自治州曲麻莱県だ。
一個のサッカーボール、チームメイトとグラウンドが、高原で暮らす少年たちの夢をかなえており、彼らはサッカーに対して想像以上の情熱を抱いている。
7月末のある日、多果君は放課後に急いで家に帰り、お気に入りのサッカーシューズを磨き、ベッドのそばに置いた。
「明日、蘇州で試合があるんだ!」。
母親がどうしたのかと尋ねる前に、多果君はうれしそうにそう話した。
小学6年生の多果君(12)の微信(WeChat)のアカウント名は「サッカーが大好きな男の子」で、恥ずかしがり屋であるものの、サッカーの話しになるとたちまち饒舌になる。
「2034杯」第2回全国小学生サッカー大会(U12)決勝が予定通り江蘇省蘇州市で開催され、中国全土からやって来た代表64チームの選手約1300人が参加した。
多果君は、初めてチームメイトと一緒に高原から離れ、初めて列車と飛行機に乗って3100キロ以上離れた蘇州市に行き、中国全土からやって来たサッカーチームと対戦した。
たくさんの「初めて」のことに、多果君たちは興奮すると同時に、少し緊張もしていた。
楽しみにしていたサッカー大会だったものの、多果君たちにとって、「蘇州の旅」はほろ苦い経験になった。
7月末の曲麻莱県は肌寒く、多果君たちは上着を着て旅立ったが、蘇州市は平均約35度の真夏日で、対戦相手は全国各地での激戦を勝ち抜いてきたチームばかりだった。
彼らは、本格的な練習を重ねているだけでなく、ユニフォームなども本格的なものを身に着けていた。
一方、多果君のチームメイトのほとんどは、他の地域に行くのは初めてのことで、初めての場所での適応力に欠けていた。
いろんな問題が一度に重なり、多果君たちはリズムを崩してしまい、6試合戦って、1勝しかできず、試合終了のホイッスルが鳴ると、多果君は下を向いてこっそりと涙を流していた。
「蘇州の旅」は、多果君にとって良い経験となっただけでなく、「僕と同年代の選手とのレベルの差を見て、努力する方向性がはっきりした」と、努力を続ける動機を得る機会にもなった。
高原の土地はやせているため青々とした芝生のグラウンドを作るのは難しく、空気が薄いため激しい練習のハードルも高くなる。
スポーツの資源も不足しているため、レベルの高いステージで戦う難度も高くなってしまうが、サッカーが大好きな少年たちにとって、決して大きな困難や高すぎるハードルとはならない。
劣悪な環境は、少年たちが自信や決意を鈍らせる理由にはならず、地元に戻ってからも、多果君とチームメイトたちは、時間さえあればいつもサッカーの練習をしている。
標高平均4500メートルの高原には、多果君のようにサッカーが大好きで頑張り続けている少年がたくさんいる。
高原から下りて試合に出場し、海外の試合にも出場して、世界で戦えるようになりたいという、少年たちの夢が今、雪が降る山で芽を出し始めている。

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